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広田のお願いなんてどうせロクなことない、と自己防御性能が働く。聞こえないフリで返事もせずに誌面に目を落とし続けた。
「あたしの友達でバツニの女の子がいるんだけどさ。新しい出会いもなかなかなくて、しばらく彼氏もいないみたいなのよね。こないだもなんかあったらしくて、すごく落ち込んでてさ。もうかわいそうで見てられないのよ」
無視されているのに、どんどん話を始める。おまえの心臓は鉄でできているのか? しかも、人の不幸を悲しむフリして、実はただの暇つぶし。女ってなんでこうも他人の話に首を突っ込みだがるのだろう。自分なら力になれるとでも思っているのだろうか。そもそもバツニ女の気持ちが、交際経験の少なそうな広田にわかるわけないだろうに。
ゆっくりプレゼント選びに専念したかったオレは、適当に会話を切り上げることにした。
「紹介できるようなやつはいないよ。別な人あたって」
ところが終話に向かうどころか、広田はとなりの席の椅子を引くと、どっかりと座って話を続けた。
「誰もそんなこと言っていないじゃない。川村君に相手して欲しいの。だって社内一のいい男だしさ、話ができるだけでも喜ぶと思うんだよね」
一方的にどんどん話が進んでいくにつれ、オレのイライラは最高潮に達する。
「お前さ、わかってるだろ? オレ結婚してるんだぞ」
「やだ、話は最後まで聞いてよね。誰も恋人になってなんて言ってないじゃない。は・な・し・あ・い・て! それに、イケメンの友達はイケメンだろうし。つながりができていれば、いずれ運命の王子様と出会えるチャンスがあるかもしれないじゃない?」
頭の中、一面お花畑だ。そんなわけあるかっての。そもそも、広田の友達ってだけでぞっとする。よく、類は友を呼ぶって言うし。そんな広田と同類の友達を、なんでオレが慰めないといけないんだよ。
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