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不自然にならないよう、いくつか会話のキャッチボールをしたあと、ああそうだ、と思い出したような素振りで、オレはカバンの中から小さな包みを取り出した。
「これ、こないだのお礼も兼ねて、誕生日プレゼント。たいしたものじゃないから、全然遠慮しないで」
レイカは一瞬驚いたが、促されて包みを開けるとすぐに白い歯をこぼした。
「いいの? なんか、あたしが催促したようになってしまってごめんなさい」
「そんなことないよ。相談に乗ってもらってすごく助かったから」
「ありがとう。すごく嬉しい! 早速着けてみるね」
長い髪を左側にまとめると首筋があらわになり、鎖骨がくっきりと浮かび上がる。思わず息をのんだ。首から肩にかけてのラインの美しさ、髪を集める仕草、何もかもがオレを誘惑しているかのようだ。どんな時も、小悪魔は決して手を緩めず、じわじわと誘い続ける。
「どう? 似合うかな」
「うん、想像していた通り。すごく似合ってるよ。良かった」
少しはにかんだあと、レイカはまっすぐオレを見つめた。
「ちょっとだけ奥様に嫉妬しちゃいました。こんな人が旦那様でいいなあって」
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