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思わず嫌味もはさんでしまうが、広田は特に気にすることもなく反撃してくる。
「奥さんに心配掛けるようなことなんて、最初からしなきゃいいだけなのに。逆ギレしないでよね。それに別に嫌だったら見なきゃいいし、開封前にゴミ箱に移せばいいでしょ。相手も子供じゃないんだから、そんなことくらいでへそ曲げないわよ」
勝手に情報漏らしておいて、嫌だったら見るなとか。訳のわからない屁理屈を次々に並べ、なぜかオレより高い位置から次々に持論をぶつけてくる。
コイツには何を言っても無駄だ。そう理解したオレは再び無視を決めこむが、広田の口は閉じることを知らない。
「小湊礼華って子で、歳はあたしたちより二つ上の三十歳。バツニは置いといて、とにかくすっごい美人なの。絶対に川村君のお眼鏡に適うと思うんだけど」
女からそう紹介されて『すっごい美人』だった試しがない。これには世の中の男がみな、大きく頷いてくれるだろう。
それに加え、オレの妻である真奈美は『すっごい美人』どころか『そうそういない美人』なのだ。美人でおとなしくて素直、と三拍子揃った大和撫子。ガサガサしている広田とは月とすっぽん、宝石とプラスチックビーズ。……いや、それじゃすっぽんやビーズにも失礼だな。
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