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真奈美と出会ったのは四年前の地元の駅だった。ものすごく土砂降りで風も強く、まるで台風のような天候の中、強風に煽られたのか骨が折れ曲がったビニール傘を持ったまま、真奈美は途方に暮れていた。
その日、真奈美は薄いスカートを穿いていた。雨と風を上から横から一気に浴びたせいでスカートがぺったりと貼りつき、足のラインがくっきりと見えていた。もっと言えば、下着のラインまで丸見えだった。その姿をたまたま目にしたオレが自分のビニール傘、それと、着ていたパーカーを『腰に巻いたら』と言って差し出した。真奈美は困った顔でこちらを見つめていたが、オレはそのまま踵を返しバス乗り場へと向かった。それが初対面での出来事だった。
後日、まるでドラマのように奇跡的な再会を果たしたのだが、その時に一目惚れをした。二度目なのに一目惚れというのもおかしいけれど、一度目の時は打ちつける雨のせいで前もよく見えていなかった。それに、あの時の手助けは容姿を見ての判断だったわけではなかった。だから、「あのう……」と真奈美が遠慮がちに話しかけてきても傘の女性とはすぐに繋がらなかった。
傘とパーカーを改めて後日返したいと言われ、あんなの捨ててしまって構わないと断ったものの、結局はひとまず連絡先を交換するということになった。
その後で少しの時間立ち話をした。年齢の割にとても落ち着いていて、派手さはなくしっとりしていた。大きな黒目でじっと見つめられると嫌でも引きつけられてしまう。艶やかなロングヘアも美しい。胸は上向きでほどよく大きく、細い腰からのラインも芸術作品のような曲線を描いていた。すべてが完璧に美しく、これほどまでの女性を見たことがなかったオレは、一瞬にして心をそっくり全部持っていかれた。
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