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『初めまして。川村です。
なんかよくわからないけど、メールすることになったようで、こっちも戸惑ってます。
まあ、愚痴ならいつでも聞きますんで、話していただいてOKですよ!』
そそくさと作ったメールにしては、割とうまく書けたんじゃないかと思う。当たり障りない普通の内容だが、義理での返信という感じにもなっていないだろう。そもそも、こちらはお願いされた側なのだから気を遣い過ぎる必要もなくどっしりと構えていればいいのだけれど、やはり相手が相手だけに自然と一段下からの目線になってしまう。一通り確認して、ここに人がやって来る前にとすぐに送信したが、その日はもうレイカからの返事はなかった。
次の日の朝、メールの受信通知があったのでアクセスをしてみたが、レイカからの返信は来ていなかった。文通じゃないんだし、そりゃそうか。バツニの話し相手と言われ、オレも少々気負いすぎていたのかもしれない。
広田がおはよう、と声を掛けてきた。
「どう? 礼華からメール来た?」
「さあね。見てないし、わからない」
「あら。そう」
小さく口角を上げ、何か言いたげでもあったが、そのまま自席へと着いた。
昼休みが半分くらい過ぎた頃、携帯の震えに気づいた。レイカからの返事を受信した知らせだった。さりげなく周りに人がいないことを確認すると、左手で画面を隠すようにしながら慎重にメールを開く。
『こんにちは!
お言葉に甘えて早速メールしちゃいます。
昨日、恵子に川村さんの写真見せてもらいました。すごく素敵な人ですね!
ベタだけど、本当にかっこいい♪
いいのかな、あたしの相手してもらうなんて……。
久しぶりにドキドキしました!
奥様がとっても羨ましいです。
あたしも次こそ、川村さんみたいな人と結婚したいな☆』
今朝、広田がニヤリとしたのはそういうことか。おそらく、レイカはオレから返信が来たことを広田に話したのだろう。本当に女共の付き合いってやつは鬱陶しい。何でもかんでも話してしまうそのシステムは、なんとかならないものか。まあでも、別に見せられてもおかしなことは書いていなかったし、知らんふりしてやり過ごすいつものパターンで振る舞えばいい。
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