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マイ・スイート・ホーム
晶子ちゃんは間違っている。
今日という今日は、さすがの僕だって黙っていられない。
これまで、大抵のことは目をつぶってきた。
仕事帰りからの居酒屋直行は、いつものことで、それはしかたない。
べろんべろんに酔っ払って、僕が週に一度心待ちにしている、カツオの切り身を買ってくるのをたびたび忘れてしまっても、部屋の中にまで到達できないで、玄関で僕のトイレを枕にして朝まで眠りこけてしまうことがあったとしても。
晶子ちゃんはお酒が大好きだし、それだけ仕事のストレスが溜まっている証拠なんだろうなって、僕はずっと鷹揚にかまえてきたつもりだ。
居酒屋からの道すがら、目に留まったものを何でも拾ってきてしまう癖にだって、僕ほど理解ある同居人は世界中どこを探してもいないと思う。
だって、そのおかげで、僕は今こうして晶子ちゃんと暮らすことができているわけだし。
正直、その悪癖に感謝したいくらいの気持ちだったりする。
だけど。
タイ古式マッサージの立て看板であったりとか、オーディオもないのに、両手で抱えて運ぶくらいの大きなスピーカーであったりとか、僕とか。
そこらへんは、晶子ちゃんにとって無害だからセーフだとしても。
人間の男は、若い女性の暮らす住まいに持ち帰ってくるには、いくらなんでもアウトだと思うんだよ。
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