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これからどうすればいいのだろう。生きることも死ぬこともしないと、どうなってしまうのだろうか。どうすれば。なにか、なにか上手いこと、この命を投げ出す方法があればいいのに――
「あの」
突然耳に飛び込んできた声に、有史は驚いて体を起こした。短時間ではあるものの光を遮っていた腕をどけたことで、木陰の先にある日なたの照り返しに、必要以上の眩しさを感じる。眩暈がしそうで、反射的に視線を木陰のなかへ戻そうと自分の左隣を見た瞬間。有史は目を見開いた。
いつの間にか、見知らぬ少女が隣に座って有史を見上げていたのだ。
先ほどまでは確かに誰もいなかったはずなのだが、気付かないくらい考え込んでいたのだろうか。それとも気付かないくらい、自分は弱っているのか。どちらにしても、じっとこちらを見つめる少女の視線はなんとも居心地が悪かった。
見たところ、小学校低学年くらいだろうか。傷みを知らない黒髪は背中まで伸びていて、淡いピンクのカットソーにデニムのショートパンツ、そこから伸びる華奢な足に白いサンダルが映えている。よくいる最近の女の子だ。
「えっと」
「おにーさん、命を投げ出したいの?」
なにか用かと話しかけようとしたが、少女がそれを遮った。どうやら先ほどの思考はつぶやきとなってダダ漏れだったようだ。
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