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あの年頃は誰もが「特別」を喜ぶもので、とくに自分たちはその傾向が強かったように思う。きっと、周りになんと思われようともお互いがいれば大丈夫だと、自分に言い聞かせていたかったのかもしれない。
そういうわけで、それからの二人はことあるごとにその場所へと足を運んだ。あるときは有史がその日のいたずらの成功談を、あるときは失敗談を大げさに話し、またあるときはお菓子やおもちゃを持ち寄って遊んだ。まじめな真澄に説得されて、宿題を持っていくこともあった。有史はいたずらをしていたからといって勉強をしなかったわけではないが――むしろ勉強は嫌いではなく、家でしっかりと宿題をやってはいたのだ――真澄いわく「私たちはうんと勉強をして、まわりの人をあっと言わせるべきだよ」とのことで、秘密の計画めいたその説得は、有史が頷くのにじゅうぶんな理由だったのだ。
結論から言えばその計画によって頭でっかちになった自分は更に世間をつまらなく思う気持ちに拍車がかかった気がするし、真澄も余計周囲に馴染めなくなってしまったかもしれない。孤独をつなぎ合わせたような関係が崩れてしまうことは、有史にとって何よりも怖いことだった。
有史は、近所の大人たちがいつか真澄を連れて行ってしまうのではないかと考えると、とてつもない恐怖におそわれた。きっと真澄も同じような恐怖を感じていたのではないかと思う。有史が同級生と喧嘩をした日、彼女は自分と一緒にいるせいなのではないかと聞いてきた。実際その通りだったりしたのだが、それを伝えることで真澄が離れてしまう可能性は、同級生と喧嘩することよりもずっと嫌だった。だからそのときは適当な理由をでっちあげて、真澄が安心できるように努めていた。
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