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そんなことを繰り返すうち、いつしか互いの居場所は互いのいる場所となり、それが秘密基地となっていた。
茂みのなかの小さな空間は、依存し合っていた二人だけの世界だった。
「大人になったら、この場所が狭く感じるのかな」
いつものように沈みゆく陽を眺めながら、真澄が呟いた。
「狭くなっても、こうやって座っていれば大丈夫だよ。それに、大人になったらここだけじゃなくて、二人でいろんな場所に行けるよ」
二年生になっても三年生になっても「大人になること」は想像がつかないほど遠いことだったが、それでも真澄がいない未来を考えるほうが難しかった。語るのは漠然とした夢でしかなかったのだが、ただそれだけで幸せだった。
「そうだね。一緒にいろんな場所へ行きたいな」
「俺たちなら、ずっと一緒にいられるよ」
「どっちかがいなくなっちゃったら」
「いなくならない」
「でも、もしかしたら事故でしんじゃったりするかも。なにがあるかわからないよ」
「それでも大丈夫、きっと俺たちはしぬときも一緒だと思う」
幼い自分たちの幼い夢は、そのときは確かな形となっているように感じた。
「長生きしたら、おじいちゃんとおばあちゃんになっても一緒にいるのかな」
「うん、きっとそうだと思う。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、一緒にいる」
「それ、プロポーズっていうんだよ」
からかい半分の真澄の笑顔は、この場所を教えたときのものによく似ていた。それでも真澄の頬が赤くなっているように見えたのは夕日のせいだ、そう結論づけて、自分の頬が温かいのも夕日が照らしているせいだと思い込むようにした。
周りからはどうしようもない男の子と、かわいそうな女の子としか見られていなかった二人。でも、それでじゅうぶんだった。
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