13人が本棚に入れています
本棚に追加
3 やっぱ、無理!
3月3日 土曜日
現在、私の所持金は、8万円。
なにをかくそう、私は、ホームレスだ。
実家があるので、生活保護は、おりない。
かといって、実家には、帰れない諸事情も、多々ある。
かといって、地下鉄へとつながる階段を下りた、だだっぴろいフロア。
もしくは私鉄のプラットホーム。
あるいは、その辺の公園で、というわけには、いかない。
私は、女だから。
自分で、いうのもなんだけど、私は、美人だ。
学園では、男の子に、声をかけられるし、街で、ナンパもされる。
芸能プロダクションから、スカウトだって、されたことも、何度かある。
・・・・・・だから、犯罪に巻き込まれたら、たまらない 。
襲われたら、・・・・・・なんて、もっと、たまらない。
・・・・・・色々、考えたけど、
やっぱり、暖かい部屋で、シャワーを浴びて、
『スティング』の、
『イングリッシュ マン イン ニューヨーク』
を、聴きながら、スパークリングワインを飲んで心地良く、酔いたい。
あら、私って、悪い女ね。
・・・・・・まっ、なんとかなるでしょ。
明日から、頑張ろう。
☆
一体何が入っているのか?
重そうなスーツケースを引きずって歩いていく。
その後ろ姿が、なんとも、しおらしい。
電柱の陰から、黒服の男が現れて、電話を取り出す。
「もしもし、ハイダです。
お嬢様は、無事に、シティーホテルに、チェックインされました」
電話の向こうの相手は、安心してほくそえむ。
そして、こう思う。
(すでに、4万近くの、出費とは。先が見えた。十日も、
持たないだろう。
泣き付いて、すぐに、帰ってくる。)
そう、思って、
「フ、フフン」
と、その人物は、
高らかに鼻を鳴らした。
危うし!ホームレスライフ。
やはり、実家に帰るのがオチなのか?
ホームレスガールの、攻防は?
(了。)
最初のコメントを投稿しよう!