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所有権は絶対である。これは近代以降、社会生活を営む者たちにとって守るべきルールであるが、家を手にする上でやはり“争い”というものは付きものだ。なんたって家ってのは数に限りがある。見た目、住み心地、広さ、全てをクリアした家なんてものはそうそうなくって、だから僕らは競争に勝たなければ安住の地ってやつを手にすることはできない。その決死の競争をスルーして家に住もうなんてのは、虫が良すぎる。彼女は家から出たがらないし、うまい飯を食わせてくれるわけでもないし、xy平面上ならy軸方向に長い僕の家の隅でいつも寝てばかりいる。 ある日僕は彼女に聞いた。 「なんで僕の家に来たのさ」 大きな目を瞬きもせず、じっと僕を見つめながら言った。 「私、黄色が好きなの。あと1番近くにあったから」 後者が本音のくせに。やはりクソである。しかし、黒くて艶やかな彼女の瞳に映った自分は笑っているようで、それも癪だった。クソだクソだと思いつつも、僕は彼女を惹かれ始めていた。 狭い家だから、寝るときは身体を寄せて寝ることになる。それがまあ嫌ではない。彼女の身体は無駄がなく、綺麗な曲線。僕のゴツゴツとした身体とはまるっきり違う。しかも脱皮した直後のように柔らかな肌。お陰でいつも寝不足だった。
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