17人が本棚に入れています
本棚に追加
「なら、姫さんを連れて帰ったらいいんじゃねぇの? 安治に里をまかしてさ。計画に加担した奴が里長になれば、安心だろ」
あっさりと良案を口にした隼人に、全員の目が集まった。
「難しく考える必要なんて無いだろ。姫さんが残ってなきゃいけない理由があるんなら、別だけど」
今度は栄に視線が集中する。
「いいえ。私が留まる理由は少しもございません。安治なら、この里をうまくまとめてくれるものと存じます」
栄が手を着いて晴信を見る。その目に、共に国政に携わりたいという決意が漲っていた。
「俺も、そうしてもらえると助かる」
晴信が受け入れれば、栄は心底ほっとしたように頬をゆるめた。その背後で、義孝が少し浮かれた顔になる。
「皆」
きりりと眉をそびやかし、晴信は座にいる顔を見渡した。続く晴信の言葉を少しも漏らさず肝に刻もうと、誰もが意識の全てを晴信に向ける。
「俺は、見ての通りの未熟者。目が行き届かないところもあるし、考えが及ばない事態もある。父上の乱したこの国を、豊かで穏やかなものにするための難題が、山のように押し寄せてくるだろう。だが、今回の件で、俺はひとりでは無い事を強く感じた。多くの者に支えられてこそ、俺は国主となれる。だからどうか、この俺を末永く支えてもらいたい」
晴信は深く、頭を下げた。
「もちろんです」
「まかせとけ」
最初のコメントを投稿しよう!