第1章

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 パーティーの途中でプレゼント交換がおこなわれた。各自がみんなに内緒でプレゼントを用意し、それぞれ交換しあった。 「私のプレゼントは、お姉様にでーす!」  佳衣から友美へのプレゼントは枕だった。 「枕?」 「ノンノン。ただの枕じゃないわよ。かの有名な『YES/NOまくら』です!」  よく見ると、枕の片面はハートマークに〝YES〟と書かれていて、裏面はバツ印に〝NO〟と書かれてあった。 「お兄様が夜這いしたときには、これで意思表示すれば夫婦円満!」 「麦は夜這いなんかしないわよっ!」  結梨が麦に渡したのはフィギュアだった。 「ただのフィギュアじゃないわよ。この世に一つしかない『木内友美メイドコスフィギュア』でーす!」  文化祭の時のツインテール友美を知り合いに頼んで3Dプリンタで作ってもらったという代物は、かなり精巧にできていた。 「へぇ、よくできてるね」 「ちゃんとスカートの中のパンツもリアルに再現してますっ!」 「え、そうなんだ?」  スカートの中を覗き込もうとする麦の目を友美の手が塞いだ。 「そんなとこまでリアルに再現しなくてもいいの!」 「あのう……二人のコアなプレゼントの後で、ちょっと渡しづらいけど……」  と言いながら、千秋がこっそり出したプレゼントは手袋だった。 「本当は手作りにしたかったんだけど、間に合わなそうだったから市販のにしちゃったの」  千秋が一人一人に手袋を手渡した。すると、 「あ、僕も同じようなプレゼントだ」  と言って麦が紙袋を取り出した。 「僕のは靴下なんだけど」  麦が袋から取り出したのはモコモコとして暖かそうな部屋履き用の靴下だった。 「リビングにいると足許が寒くて……これならいいかなって」 「お兄様にしてはずいぶんお洒落な柄よね」 「うん。実は、買う時に友美ちゃんに見てもらったんだ」  友美は麦と千秋のプレゼントが似通っていたことに、幼なじみとしてのシンパシーをヒシヒシと感じた。 「さぁ、大トリはお姉様ね」  佳衣の言葉に友美は封筒を取り出した。そして一つずつ確かめながら封筒をみんなに手渡した。 「現金? この厚みだと十万円くらいかな?」 「本当はちゃんとしたプレゼントにしたかったんだけど、思いつかなくて……それで、手紙にしてみました」 「なるほど。ということは、千秋ちゃんへの手紙は果たし状という訳ね」 「そんなんじゃないわよ」 「ねぇ、お姉様、今読んでもいい?」
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