第1章

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「えぇ。でも恥ずかしいから声に出して読まないでね」  佳衣と結梨は封を開け、手紙を取り出すと食い入るように読み耽った。  千秋も封筒を開けた。水色の便せんに一文字一文字丁寧に書かれていたのは、今まで麦のことで相談に乗ってくれたことへのお礼に始まり、自分の麦に対する想いが書き綴られ、これからも仲良くして欲しいという言葉で結ばれていた。  手紙を読み終えると千秋は、うーむ、と唸った。 「これは、読みようによっては確かに挑戦状とも受け取れるわね」  と真顔で呟いたのを見て、友美は慌てて否定した。 「ふふふ、冗談よ。これからもよろしくね、友美ちゃん」  千秋の笑顔を見てほっとしたのか、思わず友美は泣きそうになった。 「あ、ごめんね! 友美ちゃん! 本当に冗談なんだからね!」  取り乱す千秋に泣き笑いする友美を見て、妹達も一緒に笑った。 「お兄様は読まないの?」 「うん。後で一人になったときにこっそり読むよ」 「そうよね。麦君が生まれて初めてもらったラブレターだもんね」  と茶化す千秋にまたみんなが笑った。 『♪楽しいときは二人分~♪』 『♪悲しいときは半分こ~♪』  佳衣と結梨が突然歌い出した。友美はその歌に聞き覚えがあった。 「ねぇ、それって何の歌かしら? どこかで聞いたことがあるんだけど」 「これは暮谷家のオリジナルソングです~」 「我が家では楽しいときや悲しいときにこの歌を唄うんですよ」 「ふうん、そうなの」 「ときどき唄ってるから、それを覚えていたのかも知れないね」  麦の言葉に取り敢えず友美も納得した。  楽しかったクリスマスが終わり、あっという間に正月がやってきた。  正月は近くの神社に参拝した後、暮谷兄妹は友美とともに木内家を訪れた。  友美の両親を前に緊張しっぱなしの麦にずっと友美が寄り添っていた。  久し振りに娘が家に帰ってきたのと、お酒を飲んですっかり上機嫌の父がしきりに「泊まって行きなさい」とみんなを引き留めるのを友美が無理矢理家から連れ出した。 「ごめんね。パパったら、お酒が入るとずいぶんとお喋りになっちゃうから。ずっと聞いてるの大変だったでしょ」  駅に向かうタクシーの中で、申し訳なさそうに友美が言った。 「佳衣ちゃんと結梨ちゃんもありがとう。パパ達の話相手になってくれて」 「全然。お父様って、とっても面白い方ね! お母様も優しくて可愛かったよ!」
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