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麦と豚まんの話題で盛り上がっていることが意外でもあり新鮮でもあったことがなんだか嬉しかった。
麦の顔を見ながら、自分の幼少時代に彼によく似た顔の少年や、彼のようなおっとりとした少年に出会ったかどうか記憶を引っ張り出そうとしていたが、該当するような人物は全く思い浮かばなかった。
暮谷家に来たばかりの時はそれほど気にしていなかったことが、麦のことを好きになればなるほど彼と自分との最初の接点が一体どこにあったのか日増しに気になっていた。
正月に実家へ帰ったときに聞こうと思っていたが、何かとバタバタしていて聞きそびれてしまったことを今さらながら後悔した。
底冷えのする朝、千秋からもらった手袋をはめ、暮谷兄妹に見送られながら友美は家を出た。電車に乗っている間、佳衣と結梨の手作り合格祈願お守りをコートのポケットの中でずっと握りしめていた。
試験会場に入ると父からショートメールが送られてきた。そこには、
「雪!→白星!→合格間違いなし!」
と書かれた短いメッセージに、たった今撮ったと思われる写真が添付されていた。
うっすらと雪景色に覆われた街並みだった。恐らくホテルの窓から撮影したものだろう。友美は「応援ありがとう」と返信してからスマホの電源を切った。
試験対策は十分とは言えなかったが、とにかく全力を尽くそうと思った。そして、朝歩いてきたキャンパスを今度は麦と二人で歩きたいと強く願った。
試験会場は空調が弱めに設定されていて、とても寒かった。コートを膝掛け代わりにして試験に臨んだ。
午前中の試験は比較的順調にペンが走った。過去問での傾向対策からヤマを張った勉強が功を奏しているようだった。
昼休みになり、友美は自分の席で大きく息をつくと佳衣と結梨が作ってくれた合格祈願弁当を取り出し、スマホの電源を入れた。
スマホが起動した途端、その異様な光景に友美は目を見張った。
「何これ?」
友美が目にしたのは無数の着信履歴だった。発信元はほとんどが母からだった。麦の携帯や自宅からも履歴が残っていた。そしてその中に美有希の履歴もあった。
「お姉ちゃん?」
友美は言い知れぬ胸騒ぎを覚えた。
突然、電話がかかってきた。液晶に浮かぶ文字を見て、慌てて電話に出た。
「もしもし?」
「あんた、何してるのよ」
いつもと変わらない美有希の高圧的な声がした。
「今日試験なの。今お昼休み」
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