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式から数日後、四人が向かい合わせで座る急行列車は一路海へと向かっていた。
「……と言うわけで、夜は卓球、トランプ、マージャンのトライアスロンゲーム大会だからね!」
佳衣と結梨が提案したホテルでのゲーム大会の説明に友美が水を差した。
「私、マージャン知らないわよ」
「大丈夫、お姉様には夕食が終わるまでにこれで覚えてもらいます」
そう言って結梨は一冊の本を差し出した。
「『初めてのマージャン入門』?」
「優勝者には最下位の人から熱いチューがもらえます!」
「私、優勝でも最下位でもどっちでもいいなぁ!」
そう言ってはしゃぐ二人を見て、友美はまんまと二人の策略に引っかかったのではないかと思った。
「お兄様が優勝したときは、三人からキスね!」
「それで、お兄様がビリの時は三人にチューだからね!」
えー、と困った顔をする麦を見て友美は吹き出した。
『♪楽しいときは二人分~♪』
『♪悲しいときは半分こ~♪』
佳衣が歌い出すと結梨も続いた。友美も麦も唄った。
『♪楽しいときは四人分~♪』
『♪悲しいときは四分の一~♪』
佳衣と結梨が急に歌詞が変えたので、麦と友美がつっかえた。それを見て妹たちは楽しそうに笑った。
「それにしても、本当にお二人さんのハネムーンに一緒について来て良かったのかなぁ?」
「いいの。佳衣ちゃんと結梨ちゃんがいないとダメなの」
友美が嬉しそうに言った。
「またあの海に行って、四人で砂の山を作って遊ぶの。穴掘って、トンネルの中で手を繋いで」
「部屋は一緒だけど私達は目隠しと耳栓して存在消してるから、どうぞ気になさらずに」
「? 何のこと?」
「ハネムーンの初夜と言えば、お二人さん! ……ぐふふぇふぇふぇ……!」
結梨がいやらしそうに笑った。
「あ、そ。じゃあ遠慮なく二人で楽しませてもらうわ。ねぇ、麦」
そう言って友美は麦の顔を見た。麦はちょっとびっくりした顔で彼女を見返した。
「あ、海!」
佳衣が窓の外を指差した。防風林の向こうから水平線が顔を覗かせたかと思うと、やがてコバルトブルーの海が窓一面に大きく広がった。
友美は身を乗り出して海を見た。寄せ返す波が何本も白い線を描き、太陽の光をキラキラと反射させて眩しかった。
「綺麗……」
友美は自分の身体が海に吸い込まれそうな感覚に陥った。呼吸が乱れ、強い動悸と言いようのない恐怖心が彼女を襲った。
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