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「あの『リフレ』って、なんだろうね?」
アキバの文化に疎い私達には目に入るもの全てが新鮮で強烈なインパクトを放っていた。
「ノリちゃんのお店って、こっちでいいのかな?」
私達に課せられた最初のミッションは、紀子が書いた地図を頼りに彼女の働く店に辿り着くことだった。良く言えば簡略に、悪く言えば大雑把に書かれた地図ではヒントが少なすぎて、どこに向かえばいいのか、どこで曲がればいいのかがわからなかった。
早々に彼女が書いた地図を見るのをあきらめ、スマホアプリで検索することに変更した。
お店の名前を入力するとすぐに目的地までの道順が表示された。
「最初からこっちにすれば良かったわね」
スマホを見ながら軽やかな足取りで歩くミエの先導で、ほどなく店まで辿り着くことができた。
「なーんだ。案外近いんだね」
紀子の店についてホッとしたと同時に、あんまり簡単に着いてしまってちょっと拍子抜けした気分だった。
「でもちょっと待って。このお店『2号店』って書いてあるわ」
ミエの顔が急に曇った。
「ということは1号店もあるってことよね。ノリちゃんはどっちのお店で働いているのかしら?」
1号店と2号店があるなどという情報は紀子から知らされていなかった。ミエはすぐに紀子に電話したが、彼女は出なかった。
「もうお店に出ちゃったのかしら」
焦りの色が浮き出る私とミエをよそに素子は紀子が書いた地図を手に歩いていた男性のところへ一人で近付いた。
「あの~スイマセン、ちょっと教えて欲しいんですけどぉ、ここに書いてある『フェアリーテール』ってお店どこにありますかぁ?」
道を聞かれた男性は屈託のない笑顔を振りまく素子に最初はちょっとびっくりしていたが、すぐにお店の場所を教えてくれたようだった。身振り手振りで教える男性を見つめながら素子は何度も大きく頷き、最後に両手で握手をし、可愛らしく手を振る彼女にその男性は照れくさそうに小さく手を振り返して去っていった。
意外とメイドの素養があるかもしれないと、軽快にスキップをしながら戻ってくる素子を見て思った。
「ミエちゃ~ん、ゆかりちゃ~ん、わかったよぉ~!」
こういうときに物怖じしない性格の素子はありがたかった。
「この地図は、1号店の方だって。ここからすぐのところにあるみたい」
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