聖真愛の部屋

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 新興宗教と聞くと、いかがわしい印象がどうしても拭いきれない。大学生活をエンジョイするつもりが、いつの間にか入信していたなんて冗談にもならないだろう。 「前の入居者も、キミと同じ大学生だったけど、どうやら勧誘はしてこないらしい。ただ、信者の人と同居する上で注意事項があって、“部屋で大騒ぎをしないこと”と“御神体のある部屋には立ち入らないこと”。この二つを守らないといけない。どう?いけそう?」 御神体というのが気になるが、恭弥にとっては飲めない条件ではなかった。要はお互いに気を遣って住みましょうってことだ。新興宗教の信者でなくとも、ルームシェアするならば、騒がないのは最低限のマナーだろう。それに、他の物件を探す気力はもう恭弥に残っていなかった。貧乏人の選択肢は驚くほど少ないのだ。 「ここにします。三月の末から入れますか?」 恭弥は内見もせずに入居手続きを済ませ、新学期に向けて準備を始めていった。 ようやくだ。他人と同居という、若干の不安要素はあるものの、ようやくスタート地点に立てる。そう思うと身体が軽くて仕方なかった。
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