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全身を確認するために立ち上がってみると、軽い疲労感とともに体が重く、これがHPが半分以上も削られた効果なのか、高度数千メートルから落下したためなのかはわからない。
とにかく特にABCスーツのおかげで怪我はしていないようだ。
すると、突然右方向から悲鳴が。
「きゃーーーーーーーっ!!!」
と、少し離れた木々の間を駆けていく人影が一つ。
顔はよく見えないが、金髪の編み上げツインテールの少女だ。
そして黒いローブに杖という井出立ち。
そのいかにも魔法使いっぽい少女は、何やら必死に後ろを気にしながら走っている。
すると少女が走ってきたのと同じ方向の木陰から、四足歩行の獣が勢いよく飛び出した。
しかもそれは体長が二メートルはある豹に似た肉食獣で、驚くべきことに頭が二つあってサーベルタイガーのような鋭い牙を生やしている。
その双頭の豹は一目散に少女を目掛けて突進すると飛び掛った。
少女の小さな背中に鋭い爪が襲い掛かろうとした瞬間。
突然空中に出現した金色に輝く壁が、双頭の豹の攻撃を防いだ。
壁にぶち当たって大地に転がる肉食獣の巨体。
よく見れば少女が右手を空中に向かって翳(かざ)している。
「うん!? 今のは魔法の防壁ってやつなのか……!?」
思わず唸る。
よく小説やマンガで見かける光景だ。
と、いう事は、どうやら俺は異世界転移したということなのか……?
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