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そしてこの世界では、そうした「生きる死体」を叫ぶものと呼ぶらしい。
エマリィは魂を回収すると、早速持っていたナイフでせっせと死体を解体し始めた。
躊躇なくナイフを入れていく見事な手捌きに思わず感心する。
なんでも街へ戻れば、牙や毛皮は素材としてそれなりに買い取ってくれるらしいので横顔は真剣だ。
というか少し口許はニヤけていて、なんだか怖い。
そして都会育ちの俺はなかなか血生臭い行為に慣れていないので、遠巻きに見守ることに。
「タイガー、お腹減ってないーっ!?」
「いや、特には……」
正直言って、俺はまだこの状況が上手く飲み込めていなくて食欲どころじゃない。
しかし、しょぼーんとしているエマリィを見ると、つい罪悪感めいたものが。
「あ、俺のことは気にしなくていいからエマリィは食べなよ。まだ日が暮れるまでは時間があるし、俺が周りを警戒しておくから」
「ほんとに!? ごめんね。双頭の豹のお肉って腐りやすくて、仕留めたあとが一番美味しいんだよ」
と、その手にはたった今解体されたばかりの肉の塊が。
いや、そんな血の滴る肉を手に満面の笑みを浮かべられても。
その少しホラーチックな光景に、俺は苦笑するしかない。
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