第一話 異世界転移はトラブルとともに

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 ナノスーツとはゲーム内のアバターが着用しているパイロットスーツのことだ。  ならばこれもVRゲーム……!?  とは思ったものの、余りにも生々しい引力と重力と風圧に即、全否定する。 「んなわきゃねええええええええ!!!」  俺は空中で体をじたばたと捻ると、なんとかうつ伏せ状態に持っていった。  すると風圧をまともに受けてしまうので、呼吸するのも困難で、両目もまともに開けていられない。  というか、瞼が千切れそうだ。  それでも眼下に広がる地平線や海、山脈は何とか確認することができた。  そして真下に広がっている見覚えのない濃緑の大森林―― 「いやいやいや! こんな地形はゲームのマップにないから……!」  ちょっと待て!  ゲームには存在しないマップなのに、何故俺はナノスーツを着ている!?  どういうこと!?  これはゲームなのか現実なのかはっきりしてくれ!  しかし、まるで激しい落下速度と風圧が、脳みそから思考能力を吹き飛ばしているみたいで、考えが一向にまとまらない。  しかもそうこうしているうちにも落下は続いているので、大森林はぐんぐん間近へと迫っている。  つい数秒前までは大地の一角が濃緑に塗り潰されただけにしか見えなかったのに、今じゃ木々の輪郭が一本一本はっきりと認識できる。     
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