タトゥの女

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「気が早いわよ。期待しすぎ」  ぽってりとした唇から漏れる声は、艶やかで、男の心臓を指先でまさぐる。  女は男の肩にふらりともたれかかると、太ももから手を這わせて、男の右手を捉えた。そして、一本一本と指を折って絡ませる。その動きは、巣にかかった獲物を貪る女郎蜘蛛の脚を思わせる。  蜘蛛は獲物を連れて、一軒のホテルに入った。  見てくれは西洋建築のようだが、どこか張りぼての感触があって安っぽい。そのチープさが、ラブホテルだと主張している。  玄関で靴を脱ぎ、部屋に入る。女は廊下で、すとんとダッフルコートを脱ぎ落した。すると、細い肢体にアンバランスなほどの胸部の膨らみが露になる。胸元を大きく開いたドレスに身を包み、腰をくねらせて男を円形のベッドへと導く女。 「ああ、すごいよ。ミリカ」  深く入った柔肌の谷間に注がれる視線。切なげな吐息、それを合図に、男は女を押し倒した。女の首筋に顔を埋め、鼻息を荒くする。
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