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これでいいのかな? と思いながら生きているのは、みんな一緒だと思いたい。
まだ子どもだったころには考えたこともなかったのに、いつからこんなこと、思うようになったのだろう?
何をするにしても、みんなと一緒なのが嫌で仕方がなかった。先生の言いつけをちゃんと守って褒められたがっている子たちのことも、わざとやってはいけないと言われている事をやって叱られている子たちのことも、馬鹿にしていた。なんて子どもっぽいのだろうと思っていた。そんな子たちと一緒にされたくなかった。
己を知らず、周りも見えていなかったあのころ、倉橋(くらはし)波瑠夏(はるか)は、彼女の世界において、無敵だった。
自分の行動や言動に疑問を持つことなどなかったし、不安や恐怖はどこにも見当たらなかった。
未来は希望に満ちていて、輝かしいばかりの到達点としていつも手の届きそうなところにあった。届いたことはなかったけれど、でも、だからこそ、そこへ向かってまっすぐに進んでいた。―――はずだった。気が付けば、いつの間にかもう二十歳で、時間の経過から考えれば、あのころ描いていたあの場所にいるはずなのに、明らかに、ここはあそこじゃない。輝いてなどいないし、至る所に不安は埋まっているし、そこを踏めば恐怖が吹き出る。
ここは、どこなのだろう?
他力本願なんてダサいから絶対嫌だったのに、ここからあそこへ連れて行ってくれるのなら、誰でもいいから手を引いてほしい。
あのころの自分が今の自分を見たら、何と言うのだろう。厚顔無恥で上から目線のクソガキは、数年後の自分とは知りもせず、侮蔑した視線を送るだけで素通りするのだろうか。声を掛けるにも値しない人間だと、無表情に横を通り過ぎていきそうだ。
みんなと同じがいいと思う、あの無個性な団体に、自分だけは絶対に入らないと決めていた。なのにどうだろう。今の波瑠夏は、人が持っているものを欲しがって、みんなが持っているものを自分が持っていないと条件反射で焦り出す。正確には、みんなと同じがいいのではない。みんなよりも少し多く持っていたいのだ。少し、抜きん出ていたいのだ。でも無理だから、とりあえずはみんなと同じで満足しようとしているのだ。本当はもっと欲しいけれど、そのことに気付かないふりをして。
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