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 言葉は難しい。  実際に目の前にして口を動かし、その場で思ったことを相手に伝えなければならない。そこには考える時間がなくて、時に躊躇い、暴言になり、沈黙になってしまうことがある。  いつも疎くて、言葉遣いが悪くなりやすい(加え、カッとなるとすぐ手が出てしまう)私にとって、文字にして書き出したものを相手に伝える方法が一番気楽に思えてしまうのだ。その為、メールなどの連絡ツールでの私は、実際に話す時よりも長文で送ってしまうことが多い。それを前提に、この話を聞いて欲しい。 ***** 『あちゃま!』  スマートフォンの画面に表示された文字を見て、頭の上にハテナマークが浮かぶ。  あちゃまってなんだろう。最初はキャラクターの名前かと思った。  そしてふと、何かの調べもので同じ単語を見た気がして調べて見たが、どうも話が繋がらない。 『お味噌がどうかしたんですか?』  試しで送ってみると、爆笑とともに『残念って意味だよ』と説明付きで送られてきた。  実を言えば送った後に気付いたのだが、取り消しは既にできなかったため、諦めた。  それから少しずつ、連絡を取り合ってみた。同じ職場で働いていた時、何度かからかわれて遊ばれていたことがあったなと思い出し、むくれた顔文字をつけて送る。 『反応が可愛かったからね』  反則ではなかろうか。  私の予想では笑って流すか、誤魔化すか、スタンプだけ送信されるものだと思っていた矢先のことだ。  こっちは諦めきれていなんだから、もう少し考慮してほしい。それでも嬉しい気持ちは隠せなくて、我ながら気持ち悪い顔をしていただろう。  これが嘘でも本当でもどちらでもいい。  だから私は素直に答えた。 『えへへって笑う貴方の方が可愛いです』 『でも私が転んだ時に手を差し出してくれた時はかっこよかったですよ』  我ながら赤面ものだ。  それでも「ありがとう」と言って話を続けてくれる優しさに安堵した。
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