死神の正体

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 俺達はカフェのテラス席に座った。 「彼処から逃げ出したいんだ」 「転所するの?」 当然のように有美が言う。 俺は驚いた。 「知ってるのか? あっ、そうか。だったら早い」 思いあたるふしがあった。 俺は職員室でもあの言葉を言われていたのだ。 その現場に有美が通りかかったのだ。  「俺は死神だからな」 「違うよ」 俺の発言を由美は否定した。 「死ねない体はイヤなもんだよ。俺は今まで何度も死のうと思った。でも死ねないのだ。幾ら頑張ってもだめなんだ」 「でもね。簡単にはいかないと思うよ」 「施設の人間が我が儘言ってはだめなんだと解っているけど……」 俺はため息を吐いた。 そうなんだ。 一旦編入された施設は簡単には出ていけないんだ。 でも俺は、規律が乱れると施設の関係者から打診されていたのだ。 おそらく、有美はそれを立ち聞きしたのだろう。
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