吾輩は混迷中の猫である

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吾輩は混迷中の猫である

 ある夜、土管の形をしたオブジェの中で眠っているちいちゃんを見つけた。  吾輩が瞳孔を丸くして爛々(らんらん)とさせその土管の中を覗くと、暗闇の中にちいちゃんの顔が浮かび上がった。吾輩と目が合ったが、眠っているちいちゃんは気づいていないだろう。  土管に隠れているそんなちいちゃんもやけに愛らしい。  しかしそこには理由があった。ちいちゃんが気晴らしに土管の中から顔を出すと早速、ギロがちいちゃんを突っついてきた。ちいちゃんは必死に逃げるが、執拗に後を追ってきて尻尾に食いついてくる。  なんてことをするんだ、このデカ金魚は!  吾輩は猫パンチを食らわそうとして水槽に前足をかけた。その瞬間ギロは殺気に気づいたのか、素早く水底に潜り込んで間合いを取った。ちっ、逃したか。  冷静になって考える。強い者が生き残り弱い者が淘汰される、それは自然界の掟だ。このヒエラルキーを外界のものが干渉し崩すことは許されない。  吾輩は猫である以上、この金魚の世界を黙って見届けるべきなのだ。  ある日、我が飼い主の話が耳に入った。 「あなた、ギロが病気かもしれないのよ。なんだかヒレが白っぽくなってるわ」     
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