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吾輩は哲学的である
退屈こそは最上の贅沢なのだと、どこぞの野良猫は宣ったらしいがそんなことはない。日向ぼっこだけでは獣の本能が腹の底で燻って仕方が無い。
狩ることこそが生きることなのだと、猫族の血は知っている。
今日も燦々と降り注ぐ春の日差しを浴びながら芝生の上で伸びをする。
暇つぶしに追いかけるのはモンシロチョウ、トカゲ、それにカナブンだ。どうせ食っても美味くない。
そんな惰性の日常をやり過ごす中、我が飼い主が大きな水槽を持ってきたのである。
その中には三匹の金魚の姿があった。オレンジ色をした琉金。高級魚ではなさそうだ。大方どこからか貰ってきたんだろう。
吾輩は舌なめずりをしながら物色する。視線を切らさず、水槽の周りを闊歩する。
三匹の金魚のうち、二匹は体高があり比較的大きい。特に一番でかい奴がギロっとした眼をして太々しく泳いでいる。名前を「ギロ」という。なんとなく大味な予感がする。
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