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三コマ目「大ショック! 私ってクズ? 魔法少女のゆううつ☆」
「出たな怪人・惑星魔女!
断じて許さん貴様の悪行!」
えっ何よ? ここどこ?
あ、特撮番組ロケ地あるあるの廃工場だわ。でも、どーして私の目の前でダイボーガーが構えてるわけ?
「製作の予算まで使い込みおって!
おかげで尺が5ページに減ったぞ!」
ちょ……待って話が見えにゃい。
怪人ってもしかしなくても私の事いってんの?
落ち着いてよ。バイクの件で怒ってるなら謝るし。つーか、もう百回くらいは謝ってるよね。しょーみ、しつこくない? 美少女が涙ながらに土下座してるんだからさ、いいかげん許してくれてもいいじゃんか!
「聞く耳持たん! 食らえ怒りのDIEチョップ!」
うにゃぁぁ! あっぶね、当たるとこだった!
「おのれ避けたか! だが次で終わりだ!」
はは、ジョーダンばっか。目がマジになってんの、ウケる。つか面白すぎて、逆に笑えないんですけど。
「死ねい、天野そあら!」
こわい、やめてよ。
嘘でしょ。あなたが私を殺すなんて、こんなのあるわけない。夢オチにしたって、シュミ悪すぎだもん。
ね、そうだよねコウシロウ。
「ボーガー・ガチムチくんスプラッシュ!」
やだ、やだよぉ。
いやああああっ!
◇ ◇ ◇
苦しい! まるで海の底みたい。
喉の奥が甘ったるい水で溢れて、息できない!
「ごぼぼぼぼ~っ!」
窓からさしこむ夕日が瞼の裏を焼く。
タタミの上で悶絶していた私は目覚めると、大量の砂糖水を鯨の潮吹きみたくピュピューって吐き出す。
うえ~、死ぬかと思った。
ガチムチくんアイスくわえたまんま仰向けでうたた寝してたら、口の中で溶けて窒息しかけたわ(※)。
「けほっ、こーしろー、どこぉ……?」
無性に心細くなって見回すも、返答なし。
いつものクソ四畳一間に、求める姿はない。確か、仕事に出てったんだっけ。それでもうこんな時間か。思えば朝から、彼とぜんぜん喋っていない。あまりの気まずさに、私の方から話しかけるのも躊躇われた。
もしかして、このまま帰ってこないかも。
想像だけで、涙が滲む。
(※)善い子も悪い子も絶対にマネするな! 責任は負わない! というか、善悪の概念は表裏一体ゆえに立場や意見の違いで逆転するもの! つまりどちらも信じるに値しない! そんなセカイを、オレは憎む!
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