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深刻なダメージを負っている。
細マッチョ外骨格に幾筋もの亀裂が走り、血液と潤滑油が火花と共に流れ出す。起き上がりたくとも、関節のあちこちが悲鳴にも似た軋み音を上げるのみ。なぜだ、捕まっていたのはほんの数秒のはずで、他に攻撃など。
「……可哀想なひと。目覚めなければ、幸せな夢の中で死ねたのに……」
ネダリーが、てくてくと歩み寄ってくる。懐から取り出したるは、洒落たレース柄カバーのスマホ。
「……あなたは幻を見ている三分の間、無抵抗のまま、ヨクボーンに握り潰されていた……」
なんたる不覚、そして屈辱。俺は焦燥のあまり、体感時間のズレにすら気付かなかったというのか。
「……だりぃから、あとはゲームして待つ。ヨクボーンそいつ頼んだ、魔法少女もろとも抹殺……」
『ボーンッ!』
地鳴りを轟かせ、怪物がにじり寄ってくる。
次の一撃がトドメだろう、無念だ。
「……あ、限定ガチャやってる……」
シャドーネビュラにまでアプリゲーム中毒患者がいたとはな、世も末だ。
「……あ、また日吉号でた……」
そいつは確か闘犬なんとかの。
そあらくん……聞いてるか? どうせ死ぬならガチャとやら、一回くらい引かせてやればよかったなぁ。
「……でも、七枚以上ダブってるから、もういらない。素材に使う。ポチッ、と……」
「な ん だ と」
ん?
いったい誰だ? 地獄の底のマグマ溜まりが煮え立つような、この声の主は。
やけに近くから聞こえた気が……
「って、そあらくん?」
そう、紛れなき彼女であった。
理由は知らんが催眠魔法の呪縛をみごと吹き飛ばし、正気に戻ったのだ。いや、果たして正気と呼べるのか。幽鬼のごとく立ち上がり、どす赤いオーラとして可視化するほど、禍々しい殺気を燃えたぎらせているのだが。
「プラネットぉラブエナジぃチャージングぅ」
あっ、変身した。
そあらくんの周囲に円形の宇宙空間が生じて、全裸となった体に無数の流星がまとわりつく。頭に乗っかった☆は黄金のティアラに、右手に握られた☆はステッキと化す。螺旋状に舞う☆の一方は桃色のリボンとなって、銀髪をツインテールに結う。一方はツバサ折り畳む鳥の姿を連想させる、青地にフリルあしらうドレスを形成。
「嫉妬の炎はプロミネーンスッ!
逆上のウィッチ・ぷらねたん!
おんしのハラワタ、東京湾に散りばめちゃるぜよ!」
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