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血も冷えるような絶望感にへたり込む私の頬に、汚い銃口が押し付けられる。
「んくっ……!」
「さァこいつをどうしてもらおうか」
こんな事されてるのに、何もできないなんて悔しい。涙が浮かぶ。緑のゴミ収集車がすぐ横を通過してゆく。
もうおしまいだ。
私はなぶられ、そしてゴミは出しそびれる。
瞼を閉じかける寸前、歪む視界に映ったものは……
「ふんっ、なーによ。ざけんなって」
薄く笑って、目の前の粗末なモノをはたいてのける。
「まだ減らず口を叩く余裕があるのか?」
「遅いっつーの……」
「いや俺はむしろそうろ……うげっ!」
いらん個人情報を漏らす怪人さんの後頭部に、風切る速度でまっすぐに飛び込んできた物体が、ぶち当たる。
宝石でデコられたド派手なコンパクト。
私の変身アイテムである、コズミックパクトだった。
「遅れてすまない……そあらくん」
よろめいて膝をつくスコープマグナムさんの背後に、あの男が立っている。
鋭い瞳に静かな怒りの炎をたたえた、彼が。
戦場に似つかわしくない、可愛らしいエプロン姿で。
「だがキミも、うかつだぞ。だいじなものを間違うな」
「大地いいいい、コウシロウうううう!」
スコープマグナムさんが唸り、銃口の向きを変える。
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