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でもおあいにく、それよりも遥かに速い。
私がベルトをぶん投げる動作の方が、何倍も。
「返すわよ、コウシロウ!」
受け取ったそれをすばやく腰に巻くと、コウシロウは構える。左の拳を腰の高さに、右の掌を斜め前へ。突きだした左手を右手とクロスさせ、肘を引いて、ベルトのバックル側部から伸びる2本のレバーを叩く。
「変身」
『VOGUE―ON!』
電子音声が応え、コウシロウは全身から紫電を放つ。
こうして、もうひとりの彼が誕生する。
鋭い稲妻型の複眼と牙を有するマスク、漆黒と深紅のツートンに塗り分けられた流線的な細マッチョ外骨格。しかと目で見よその勇姿、耳に聞けその雄叫び、これぞまさしく我らがサイボーグ戦士・ダイボーガーである!
え、そろそろ撃たれるんじゃないかって? 大丈夫、だってスコープマグナムさんなら……私が止めてるし。
「ダイボーガーよ、マグナム銃を食らってむせろっ! あ、あれ……弾が出ぬ?」
「詰まってんじゃない? もう一回、撃ってみたら?」
「よし、ふんっ! ああああああ!」
力んだマグナムさんの股間は次の瞬間、爆ぜ飛んだ。
暴発だ。
あーあ、だから詰まってるって言ったのに。
ま、私が魔法で銃身内に留めたんだけどさ。
手の中には、さっき拾ったコズミックパクトがある。これさえ持ってりゃ、単純な魔法くらい使えるのよね。
「ありがとう、そあらくん」
悶絶する弾無し怪人めがけ、突進するダイボーガー。背部のブースターを吹かして、推進力に身を任せる。
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