0人が本棚に入れています
本棚に追加
リリルは思い出す。
ギャング達がこの惑星コーネリアに来た日のことを。
この町に住む多くの人間が殺され、彼女の両親もそうだった。
殺される両親を物陰から見つめ、ギャング達が去った後は両親の死体にまぎれて、二日間やり過ごした。そんな地獄のような二日間。生きる術を持たない彼女は冷たくなった両親の体に触れ続け、そして生を諦めようとした、正にその時。
「おい、大丈夫か！」
突如降りてきた声に彼女はとっさに顔を上げた。
「お譲ちゃん！ 怪我はないか？」
両親の死体から抱き上げられた少女は目を見張る。
この男がギャングなら私の命はない。
そう覚悟したのだが。
「よかった、生きている人がまだいた！」
そう言って男は彼女を抱きしめた。
まるで遠い昔を思い出すかのように、彼女にとって。
その男の温もりは。
とても暖かく。
そして優しかった。
「うぅ……うあぁぁぁん！」
まるで栓が切れたかのように、彼女は泣き出す。
死に怯え続けていたあの時から、彼がまるで救ってくれたように感じた。
「もう大丈夫、ギャングの大部分は今この町にいない」
そう言って男は彼女を背に抱えて飛び出す。
それが義父との記憶。
両親を殺され、一人生きる術も知らぬまま生きて行くしかなかった少女が出会った。
一人の優しい男だった。
最初のコメントを投稿しよう！