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「野郎共! 俺様の名を言ってみろ!」
「「「我らが”オークファミリー”のボス! オーク・ジキル様です!」」」
「その通り!」
部下に崇めさせるその男。
巨躯な体、一般人の三倍を優に超えようその巨体は緑色の皮膚で覆われており、顔には無数の傷跡から歴戦の猛者を思い浮かばせる。
「この俺様が今回、お前たちに浴びるだけの酒をプレゼントしてやる、つまり宴だァ!」
ボスの掛け声とともにファミリーの人員は一斉に己の盃を空へ掲げた。
「さすがだぜボス!」
「いよっ! 男前!」
「フハハハハ! じゃんじゃん呑みやがれ。所詮この町から略奪した酒だ!」
下品に笑うボスに釣られ、ファミリーの人員も高らかに笑う。
「おう兄貴、どうした今日は気前が良いみてぇだな」
ファミリーが騒ぐ中、ジキルの横に立つ男が言う。
「おう弟よ、呑んでいるか?」
「まぁな」
ジキルの横に立つ男。ジキルと似た風貌だがそれほど体格は巨体と言うほどではなく、一般人と比べて少し大きい程度。
名は――オーク・ハンド。
オークファミリーの幹部であり、ジキルの弟でもある。
「いや”ルッチ”の奴が宇宙間電話を隠し持っていた奴をぶっ殺したらしくてな、今日はルッチへの褒美を兼ねてるってわけさ」
なるほどね、とハンドは笑いながら聞く。
「だがよ兄貴、ルッチの奴は見えねぇが?」
「また散歩にでも出かけてるんだろうよ、そのうち帰って来るさ。今は気にせず呑め呑め!」
オークファミリーのボスであるオーク・ジキルは上機嫌にまた酒を呑む。
「あれがギャング達ね……」
オークファミリーの拠点。そこから数百メートルほどの距離で、ルージュと伽羅は物陰に身を隠しつつ、望遠鏡を手にギャング達の様子を伺う。
「ルージュちゃんどう思う?」
「こりゃ手練れは多くないわね、いいとこ有象無象だけど……あのボスらしき奴と幹部らしき奴が一名、あいつらだけは別格ね」
そう呟くルージュの目にはオーク・ジキルの姿とオーク・ハンドの姿が映っていた。
「なるほどね、私の手配書にも載っているわ。二人ともAクラスの賞金首よ。剣を背負ってるのは頭目の弟で、オークファミリーの幹部よ」
「じゃあ副頭目にあたる奴はいる?」
「姿が見えないわね。宴会に参加していないのか、それとも見回りにでも行ってるのかしら」
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