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カズは、一人町を歩いていた。リリルの話を聞き、リリルの心情を想像した上でカズはただ迷っていた。
「さぁて、どうすっかなぁ」
ため息交じりに呟いたとき、ふと気配がして振り向くとそこには一人の男がいた。
「貴様一体何者だ? どうしてこの町にいる?」
尋ねる男は黒いローブに身を包んだ大男だった。
口元から見える牙に豚のような鼻。
オークファミリーの副頭目。
オーク・ダガーがそこに居た。
「あー、俺はアレだ、俺は単なる無害なコーネリン人だ。だから気にしないでくれ」
そう言ってやり過ごそうとしたカズをみて、ダガーは小さく笑う。
「そうか、自称コーネリン人よ。だがおかしくないか? この惑星には我々とコーネリア人しか居ないハズ」
「……………」
やってしまった、そう言わんばかりにカズは頭をかく。
「なるほど、貴様宇宙から来た外種か。一体なにをしにこの星へ来たのだ?」
「別に俺はお前らのことなんか興味ねぇよ、じゃあな」
「ハハハそうかね。だが貴様に用がなくとも私にはある。それ――」
そして、ダガーは手を前に出し、中指と親指を合わせ、鳴らした。
「爆ぜよ!」
瞬間――何もない場所の空気が一気に膨張し爆発。
爆弾を投げた気配も、銃を使った気配も無かったにもかかわらず、急に自分の真横で起きた爆発に、不意打ちに似た受け方をしたカズは爆風に巻かれて家を三軒貫くほどに吹き飛んだ。
「ふむ、殺してしまったのかな? 一体何者なのか問わねばならんかったが、まぁ仕方あるまい」
人の居ない町、そんな静寂の中で起きた爆発にルイスとリリルは家から飛び出した。
「カズ、どうしたの?」
無防備に路上へ出てしまった二人は、そのままオークファミリーの幹部と対面する形になってしまった。
「貴様もさっきの者と同じか、言え。貴様らの目的はなんだ?」
ダガーの姿を見たリリルに戦慄の色が走る。
「あいつは! ダガー!」
「誰なの?」
「ギャングの副首領です!」
思わぬ遭遇にルイスは身構えた。
戦闘手段など何一つ持たない彼には、ただ逃げることしかできない。
どうにか逃げてカズの元へ急がねば。
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