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「まあ待てよクソガキ、お前がダガーをやったて言うんなら俺が直々に殺してやるよ。だがそこの小娘と、我が弟の戦いを見てからでも遅くはねえだろ?」
「戦い? 何言ってんだ?」
「なんだと?」
「あんな奴とルージュじゃ戦いにすらなんねぇよ」
剣戟の音が響き、ルージュとハンドは斬り合う。
だがその戦いは、一目でどちらが優勢かわかる程に差があった。
ハンドの剣、オークファミリー一の剣豪を自称するだけあり、その剣筋は鋭く速い。
しかし剣は空を切るだけで、ルージュにかすりもしなかった。
一方ルージュは、完全の見切っているかのように最小限の動きで刃を避け、時折隙を見てはハンドの四肢に切傷をつける。
「クソッ!」
たまらずハンドは後ろに飛び、十メートルほど距離をとる。
そしてクラウチングスタートのように体勢を整え剣を構えた。
ハンドの数々ある剣技の中でも最強の型。
開いた間合いを最速で詰め相手を貫く。
今まで防いだ者は居ない最強の技。
「くたばりやがれ!」
大地を蹴り、間合いを詰める。
十メートルはあった間合いが一瞬で消え、ルージュの喉を貫こうとしたその瞬間――
ハンドの頭が撃ち抜かれた。
ハンドの頭を貫いた弾丸。
それは近くにいた伽羅の放った弾丸。
完全な不意打ち。
体勢を崩し、意識を失って無防備になったハンドの肉体。
ルージュは、容赦なくそれを切伏せ決着した。
「なっ、卑怯だぞてめぇら! よくも俺の弟を!」
当然のように慌てふためくジキル。しかしカズは呆れたようにため息をつく。
「卑怯だって? お前誰を相手にしてるつもりなんだ?」
「なんだと?」
「アタシ達は海賊よ、まさか正義の味方を相手にしてると思った?」
確信を突かれたジキルはうろたえる。
その隙をつくようにカズは飛び上がり、ジキルの顔を拳で打ち抜いた。
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