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5話
体重差は三桁を超えるであろう体格の差、だがカズはそれを無問題のようにジキルの巨体を浮かせ、あろうことか吹き飛ばす。
宙を舞うジキルはなんとか受身を取り、棍棒を構えなおした。
「くそが! ガキ共! 俺を怒らせた奴がどういう末路を辿るか味あわせてやる!」
手にした棍棒を高々と上げ、ジキルは吼える。
「鉄よりも重く、鋼よりも硬いジュラールという大木でできた棍棒! 重さは優に三〇〇キロを超えるこの棍棒を扱えるのは、宇宙でも怪力のミュータントである俺を除いて存在しない!」
「さっさと来い」
カズは拳を引いて、アッパーの構えをとる。
ジキルは、カズとの距離を詰め、棍棒を振り下ろす。
空気を切り裂いて落ちてくる棍棒。
カズは自分の制空圏に棍棒が触れた瞬間、拳を打ち出し、
棍棒を砕き、貫き、ジキルの腹を打ち抜いた。
再び宙を舞うジキルの体。
再び受けたダメージは再起不能な程に深く、受身もできず地面に落ちた。
「なんだぁ……あのガキ、一体どれほどのパワーを……」
武器である棍棒も、肉体の防御も貫かれて思考が追いつかない。
「立て」
地面に伏せる自身に降る声。
それは見下されながら発せられた言葉と瞬時に理解できた。
「この俺様を誰だと思っていやがる! あァ! 元オーク海賊団の船長、オーク・ジキル様だぞ!」
そう叫びながらジキルは立ち上がり拳を打ち出す。
だがそれは受け止められ、伸びきった腕の内側にカズは潜り込む。
そして再びジキルの腹部へと正拳を打ち込んだ。
「ぐふ!」
数歩よろけてから仰向けに倒れ、ジキルはカズを見上げてる。
カズの顔は、怒りに燃え、目は殺意に満ちていた。
「もう一度だ、立て」
もう立ち上がれない自分の体。
命令される侮辱と、見下される怒りでジキルは再び立ち上がる。
だが次の瞬間には再び頬を打ち抜かれた。
意識が朦朧とする。
視界が真赤にそまる。
それが自分が流している血だと理解するのにジキルは数秒を要した。
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