マフィアは孤独に恋を謀る。

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 グラスを傾ける辰巳へと、すぃ…とフレデリックは音もなく手を伸ばした。開いたシャツの間から覗く鎖骨を長い指先で辿る。ちらりと、辰巳の視線がフレデリックへと向かう。  ほんの少し前まで感情に振り回されていた事などおくびにも出さず、フレデリックは自ら辰巳の顔を覗き込んだ。 「それまで、ずっと一緒にいてくれる?」 「お前は休みでも俺は仕事だタコ。ついて来んのは勝手だが、人前で妙な真似したら承知しねぇからな」 「かしこまりました、若」 「悪ノリすんじゃねぇよ阿呆」  頗る渋い顔をして横目でにらむ辰巳に、フレデリックはクスリと笑う。ともあれ休暇の残りを有意義に使うことが出来そうな予感にフレデリックは満足していた。   ◇   ◇   ◇  翌日。フレデリックは辰巳の胸の上で目を覚ました。ぼんやりと目蓋をあげれば太い梁が見える。そういえば日本へ来たのだと、そんな事を思い出しながら頬になじんだ肌の感触に癒される。  畳の上に敷かれた布団は、ベッドに比べるとかなり硬い。当初その硬さにフレデリックは子供の頃を思い出したものだった。     
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