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マフィアは孤独に恋を謀る。
些か重量感のある扉をフレデリックが開けば、一陣の風がさっと頬を撫でた。目の前には真っ青な空と白い雲、そして、紺碧の海が広がっている。そう、ここは誰のものでもない大海原に浮かぶ”我が家”だ。
乗客のほとんどが上質な衣服を身に纏い、穏やかな時間を過ごしているのは、さすがに世界一の豪華客船と呼び声も高い船…といったところだろうか。
木製のデッキに足を踏み出せば、脚下でコツリと踵が鳴った。同時に、デッキで風に当たっていた幾人かの乗客がフレデリックの姿に気付き、ゆったりとした足取りで近寄ってくる。
「キャプテン、フレデリック。お写真を一枚お願いできますか?」
「喜んで」
客船『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』ではよく見られる光景。それは、フレデリックの行く先々で交わされる非日常の中の日常だった。
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