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面会数日後。
再び刑務所前に停車中のワンボックスカー。
女弁護士弐野原ノエルはすっかり落ち着きを取り戻し、手際良くチームをマネジメントしている。
どうやらリーダーらしいくだんのメガネ男子――ノエルが“副長”と呼んでいる、しばるにはギリギリの長さの瀝青炭色の髪が、後ろでぴょこんと跳ね、仕立てのいい三つ揃えのスーツに身を包んだ青年――がニコニコしながら見ている。
「なに見てるのよ?」
「んふっふー、かわいいなぁって思って」
「///や、やめてよね。からかうの///」
「からっかてないよー♪ 決行直前だからこそ、われわれ全員身も心もキレイでいなきゃ……でしょ?
あ、そうだ。冷蔵庫に桃缶あるよ。今日は白桃だよ。ひと息入れておあがり」
白桃のシラップ漬けを、スタッフ全員分の器を用意して盛りつけ、配る。
ここでうっかり、「自分、桃缶苦手なんスよねー」などと空気を読まない発言をしようものなら、即、お払い箱になる。
ノエルは缶に残しておいた一切れを挿しすくい、口に放り込む。
「ん、んまい」
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