第一章 女弁護士の最終確認

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「今日はいいニュースを持ってきたんだ。決まったよ、仮出所の日取り。これで普通の社会生活に戻れる、おめでとう!」 「本当ですか! ありがとうございます! 嬉しいです! 弐野原さんと支援会の皆さんのご尽力に、感謝の気持ちでいっぱいです!」 「いやいやいや、きみの努力の賜物だよ。前回は身元引き受け人が見つからずかなわなかったけど、その間も腐ることなく模範囚として過ごし、保護会もついに受け入れを認めたんだからね」 「弐野原さんが説得してくれたおかげです。僕は………あの少女に非人間的な行為を………  言葉では言い表せないほど酷いことをしました。あの時の自分がいまの自分と同じ人間だなんて認めたくない。認めるのが怖いんです。 どうしてあんなに残忍になれたのか、考えるだけで身も心も震えてしまう。  弐野原さん、――先生! 僕は、僕は……ご遺族にどうお詫びすればいいでしょうか?  ご遺族は僕の仮出所が認められて、どれほど心を痛めておられるか……そのことを考えると、やはり辞退すべきだったかもしれないと迷ってしまって……よく眠れないんです」  顔を俯けたままの日下部に、弐野原ノエルは優しく語りかける。 「日下部くん、顔を上げて? 手を……」 「!」  弾かれたように顔を上げる日下部。ノエルをじっと見つめる。  震える右手をゆっくりと持ち上げ、強化ガラス越しのノエルの左手に重ね合わせた。  その瞬間、凄まじいまでの禍気(まがけ)がノエルの内部に入り込んでくる。
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