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「今日はいいニュースを持ってきたんだ。決まったよ、仮出所の日取り。これで普通の社会生活に戻れる、おめでとう!」
「本当ですか! ありがとうございます! 嬉しいです! 弐野原さんと支援会の皆さんのご尽力に、感謝の気持ちでいっぱいです!」
「いやいやいや、きみの努力の賜物だよ。前回は身元引き受け人が見つからずかなわなかったけど、その間も腐ることなく模範囚として過ごし、保護会もついに受け入れを認めたんだからね」
「弐野原さんが説得してくれたおかげです。僕は………あの少女に非人間的な行為を………
言葉では言い表せないほど酷いことをしました。あの時の自分がいまの自分と同じ人間だなんて認めたくない。認めるのが怖いんです。
どうしてあんなに残忍になれたのか、考えるだけで身も心も震えてしまう。
弐野原さん、――先生! 僕は、僕は……ご遺族にどうお詫びすればいいでしょうか?
ご遺族は僕の仮出所が認められて、どれほど心を痛めておられるか……そのことを考えると、やはり辞退すべきだったかもしれないと迷ってしまって……よく眠れないんです」
顔を俯けたままの日下部に、弐野原ノエルは優しく語りかける。
「日下部くん、顔を上げて? 手を……」
「!」
弾かれたように顔を上げる日下部。ノエルをじっと見つめる。
震える右手をゆっくりと持ち上げ、強化ガラス越しのノエルの左手に重ね合わせた。
その瞬間、凄まじいまでの禍気がノエルの内部に入り込んでくる。
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