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なじみの刑務官に付き添われ、監房へ戻る日下部宣久服役囚。
その道すがら、刑務官が日下部に穏やかに声をかける。
「良かったな日下部。ここでの経験を糧に、もう一度きちんと人生をやり直すんだぞ」
「はい……ありがとうございます、大和田刑務官。刑務官にはいくら感謝してもしたりないくらい感謝しています」
「保護会のメンバーにも、それくらいの気持ちで接するんだぞ」
「はい!」
日下部の返答に満足した大和田は、監房棟につながる鉄製ゲートの前に辿り着くと、インタフォンで内部監視室に指示を出した。
重々しい擦過音とともに、ゲートが大儀そうに開く。
大和田にうながされ、日下部が足を踏み入れるや、開くときはあれほど遅鈍だったにもかかわらず、まるで流れるようにゲートが閉まった。
「じゃあな。もう少しの辛抱だ、しっかりな」
もう一度声をかけられた日下部は、足を止め、大和田に深々とお辞儀をした。
そうして二人は背中合わせになり、それぞれが向かうべき場所へと歩みだした。
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