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日下部は込み上げてくるクツクツ笑いを止めるのに苦労していた。
大和田とバトンタッチした、内部監視室の新任刑務官に気づかれないよう顔を俯けて、しずしずと歩を進める。
心中ではすでに高笑いが始まっていた。
房につくと日下部はそそくさと中へ入った。
このままだと吹き出しかねない。
新任刑務官は日下部の様子をとくに気にかけることなく、事務的に作業を終え、去っていった。
『ハハ、ハハハハハ、ハーッハッハッハッハッ! ハッハッハッハッハ!』
『大和田! バカめ! 俺を自由にすると決めた審議官ども! バカめ! 俺を受け入れることにした保護会の連中! バカめ!
俺を12年間もこんなところに閉じ込めた裁判官、検察、裁判員、あの女の遺族! 俺をざまあみろとあざ笑った世間! バカめ!
貴様ら全員に必ず復讐してやる! 楽しみに待っていろ!!
そして弐野原ノエル! 俺の次のターゲットはアンタだ……苦悶に歪むアンタのきれいな顔を眺めながら呑む酒は、さぞかし美味いだろうな……クックックックック』
日下部は舌なめずりしながら目を細めた。
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