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硬質な何かにひびが入る様な、森で朽ちた小枝を踏んだ様な、そんな音がした。
所謂、ラップ現象と云うものだが、当時の俺はそんな事、露ほども知らなかった。
「なんだ、あんた、音で返事が出来るのか?おい、あんたはどうだ、どんな環境で育った。俺より不幸だったか、どうだ」
パシッ
ミシッ
「何が有ったんだか、俺には分らねぇ、でもよ、やっぱ、死ぬのは良くねぇ、良くねぇよ、一度きりの命なんだぜ」
ブッシャァァァァーーーーー!
ブッシャァァァァーーーーー!
ブッシャァァァァーーーーー!
ブッシャァァァァーーーーー!
「キャアァァァーーー!」
俺の問いかけが終わるのを待たず、家中、庭に至るまで、水道という水道の蛇口がいきなり全開で開き滝の如く水が溢れ出る。
玄関先に居た姉ちゃんの悲鳴を聞いて、俺は急いで階段を下りた。
「悪霊退散!悪霊退散!悪霊退散!」
すると、玄関先に、拳ほどもある大きな珠の数珠を首に巻き、漆黒の太い眉毛を怒らせ、何やら呪文を唱える坊主が現れた。
「せ、先生、良かった、間に合った」
「先生?」
俺は坊主を先生と呼ぶ姉ちゃんに鸚鵡返しで問い質した。
「そう、この方は有名な霊能者で、織田藻道(おだ もどう)さんです。余りの怪異に買い手がつかなくて困っているこの物件を何とかしてもらおうと思って、来て頂いたんです」
「織田無道ではなく、藻道?」
「そう、藻道さん」
・・・インチキの更にパチモンかい・・・
「おのれ悪霊、臨!兵!闘!者!皆!陣!裂!在!前!ランボルギーニディアブロゥゥゥゥ」
・・・めっちゃ、正真正銘の紛い者ですやん、この坊主・・・
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