引っ越し

12/14
前へ
/74ページ
次へ
何か怪訝しいと思ったのだ。 俺は自慢じゃないが、前向きにしか物事を考えない。 常に、その時の自分にとって何が最善か、それしか考えない人間だ。 それが、今朝は違った。 感傷的になり、寂寥を覚え、芽生えることの無かった恋心などを夢想してしまった。 確かに俺は、紺野さんの事が好きだったのかもしれない。 しかし、人間にとって一番大切なのは、今、この瞬間なのだ。 終わった事など、単なる記録に過ぎない。 昔に撮影した写真に写り込んだテーブルの料理は、もう永遠に味わう事など出来ないように、終わった事は、誰がなんと言おうともう、終わりなのである。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加