10人が本棚に入れています
本棚に追加
「やめてください、余計なお世話です」
「そう?」
ぐずぐずとソファから身体を起こして、椎名さんはブルーの四角いパッケージに手を伸ばした。
フィルターを口紅で色づけながら眉を寄せて火を点ける。
「でもなんか悪いじゃん? いっつも一方的っていうかさ。あたし、テクなら結構自信あるよ? タイケンしてみちゃうー?」
「だから要りませんってば」
ブラインドの隙間に人差し指を引っかける。昼の明るさはいつの間にか、影の時間に塗りつぶされていた。
「もう帰んのォ?」
「帰りますよ」
我ながらそっけない声が狭い部屋に響いた。
紺色のソックスをふくらはぎの真ん中まで引き上げる。
「うわあ、そうしてるとまるで優等生だねえ。品行方正ー。見ようによっちゃ清楚にすら見えるんじゃないの」
見る目さえなければね、なんて余計な一言を付け加えて椎名さんはタバコをくわえたまま器用に口角を上げてみせた。
「何それ。煽ってるつもりなんですか、それで」
無様にブラジャーを引っかけたまま剥き出しの脚でソファにあぐらを掻いている椎名さんの口先に掌をかざして、低い声で言った。
「じゃあそれちょうだい。吸いかけでいいからさ」
「君まだ高校生でしょ。法に触れちゃうって」
最初のコメントを投稿しよう!