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見ているだけで胸焼けがしてくる。
姉さんがこよなく愛するこのマヨネーズというものの魅力が、私には全く理解できない。そして全く同じことが椎名さんにも当てはまっている。
姉妹で同じように育てられたはずなのに、姉さんと私はかなりの部分が重ならない。
椎名さんをバカな女とすれば、姉さんはにぶい女だ。
昔から要領が悪くて、とろくさい子供だった。
私は勘が良かった方だから、ほとんどなんでも姉さんよりもよくできた。
大人たちの受けはおおむね、私の方がよかった。かわいいとか将来美人になるよとかその上頭もいいんだね、とか。
姉さんのことを素直で優しいいい子だと褒めた大人は去年死んだ田舎のじいさんだけだった。
さすがにマヨネーズを浮かべたりはしていない味噌汁を一口すすって、姉さんがつまらない会話の見本帳から抜き出してきたみたいな言葉を並べはじめた。
「お母さん、しばらく夜勤あるんだって」
「へえ、そう」
そのうちの何割が本当の夜勤の日なのか、分かったもんじゃないな。
「お母さんいないと静かだし、ちょっと寂しいね」
「そう? うるさくあれこれ言われなくてすむからいいんじゃない。多少遅くなっても怒られないし」
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