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「同姓同名のルポライター」
「ええ」
「たぶん、その方と間違えたのだと思います」
「そう、ですか?なんだか、スポーツ紙の、その、あまりタチのいい人物ではないと聞いたこともありますが」
「ますます、その人だと思います。なかなかにチャーミングな方でした」
「え・・もしかして、プリンセスは、その犬神明という男をご存知なのですか」
「ええ」
「どうして・・ああ、あまり聞いてもしかたないことですね」
「いえ、そうでもないですわ、メイ。私、すでに何度も”お忍び”で日本にも行っていますのよ」
「そうなのですか?」
「まあ、小さい国の人間ですから、いくらでも自由は利きます」
「でも、あなたほどの方が街中を歩いていれば、皆、気がついて、騒動になりませんか?」
「まあ、目ざとい人が居ても、”カゲムシャ”だといえばそれで話は終わりますから」ルーナはその当時有名だった巨匠の映画の題名を言った。
「そうですか?なんか、信じられませんが。そういってはなんですが、プリンセスの持っているオーラは、余人には真似できないと思いますが」
「そうでしょうか。私、これでもニンジュツも使いますのよ」そういうと、ルーナは、左手の二本の指を立てそれを右手のひらで握り、右手の指も二本立てるしぐさをしてみせた。
「忍術ですか」メイは、おもわず続けた。彼女は意外な日本通なのかもしれない。
しかし、彼女はその超能力の陰に隠れて、高い知能指数の持ち主であることはあまり知られていない。彼女のような如才の無い人物なら、これくらいの芸当が言えて当然かもしれない。
「妹のリアも巻き込んで、やっています」
「リア姫を、ですか・・はあ」
まったく、うらやむべき家系、このリア姫もまた美少女なのだ。
「しかし、どうして僕、いや、そのイヌカミ・アキラに会おうと?」メイは、話題を戻した。
「個人的な話なのですけど、あの方に調査をお願いしていたことがあって。その結果をわざわざ教えに来てくださったのかと思ったのです」
「そうでしたか、それは、残念でした。人違いです。僕は、そのイヌカミ・アキラ氏とは知己では在りませんし、ただの研究者ですから」
「そうでした、ごめんなさい」
「いえ、それは、僕のほうが、申し訳ない気がします。残念ながら、プリンセスのお役には立てそうにないですが」
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