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『古事記』は、西暦712年に編纂された、日本最古の歴史書……学校では、そんなふうに習います。いきなり、そこに「たてつく」ようで心苦しいのですが、『古事記』はかならずしも純粋な「歴史書」ではありません。とくに「上(かみ)つ巻(まき)」と題された、この書のいちばん最初の部分には、人間が登場することさえありません。そこに描かれるのは「神」です。古代の日本人が思い描いた神のすがたが、そこにあります。ですから、すくなくとも、『古事記』の「上つ巻」に書かれているのは、「歴史」というより、「神話」と言っていいと思います。
この本では、『古事記』の、神話が描かれた「上つ巻」だけをあつかいます。そのつづきである「中(なか)つ巻」「下(しも)つ巻」では、すこしずつ「神話」から「歴史」的な色合いが濃くなっていきますが、それらは、ときおり参照するだけにとどめて、古代の日本に伝えられた神話について読み解いていきたいと思います。
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