エピソード①神々の誕生

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【むすひ、とは?】  まずはじめに、高天原に三柱の神が現れたとされます。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神産巣日神(かみむすひのかみ)です。「柱」というのは、神や霊的な存在、高貴な人を数えるときに用いる数え方です。はじめに現れた三柱の神は、その後に現れた二柱の神とあわせて、神の中でも特別な存在と書かれています。いったい、どんな神なのでしょうか。  天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)は、その文字から察するに、「天の中心にいる神」と読みとれます。言ってみれば、神話が語られる世界・宇宙の中心にいる神、というイメージでしょうか。ところが、今後『古事記』には、いっさい、この神が登場することはありません。冒頭でのみ、その名が語られて、すがたを消し、以降、どんな活躍が描かれるわけでもないのです。  天之御中主神のように、最初に現れて宇宙の中心に鎮座し、しかしその後、何もしない存在、というのは、世界各地の神話にも多くみられます。そうした神を、ルーマニアの宗教学者・民族学者であるミルチャ・エリアーデは、「暇な神」と名づけました。もちろん、「暇」というのは、時間をもてあまして退屈している、というような意味ではありません。とくに何かをすることがないながらも、神話が語られる世界・宇宙の真ん中に、「でん」と鎮座して、世の中を見守る存在、と理解していいかと思います。
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