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高御産巣日神、神産巣日神の名につく「ひ」には、「日」という漢字が充てられています。これを本居宣長がどう解釈したかというと……
【「日」は霊異(くんび)の意の「比」であり、凡て物を生成すことの霊異なる御霊】
ん~、むずかしいですね。
まず「霊異」です。「くんび」と読むようですが、文字から察するに、「たいへん不思議な霊的な力」ということでしょう。が、どうも私には、うなずけません。
何がうなずけないのか? まずは、ここで言う「霊」の意味が分からないのです。現代でも「幽霊」とか「霊感」とか「霊能」というふうに、目には見えないけれど、きっとどこかにあって、たいへん不思議なものとされるのが「霊」かと思います。
「霊」という言葉は、このあとで登場する神々の名にも多く用いられています。「御霊」と書いて「みたま」と読みます。たとえば、「おいなりさん」という愛称で親しまれる神は、「宇迦之御霊神(うかのみたまのかみ)」という名前ですけれども、「宇迦・うか」というのは、食べ物、中でも穀物をあらわす古語とされます。で、その「御霊・みたま」ですから、それは「食べ物の命、穀物の命」と解釈すると、この神がどんな神であるか、すんなり理解できます。つまり「霊」とは「命」のことであると理解できるわけです。実際に、「命」と書いて、「みこと」と読む神も多くいます。有名な「須佐之男命(すさのおのみこと)」のような神です。こうして、『古事記』に描かれる神には、ほぼすべてに「神(かみ)」「御霊(みたま)」「命(みこと)」の、いずれかの語がつけられています。ですから、「日・ひ」にかぎらず、やはり、そうした神としての存在であるとか、神の活躍が描かれる神話であるとか、そうしたものすべてが「霊異なるもの」であって、ここで急に「日・ひ」は、「凡て物を生成すことの霊異なる御霊」と言われても、容易にうなずくことができないのです。
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